「マタイの福音書」連続講解説教

愛は自分の正しさに死ぬ

マタイの福音書第26章57節〜68節
岩本遠億牧師
2021年8月1日

人々はイエスを捕らえると、大祭司カヤパのところに連れて行った。そこには律法学者たち、長老たちが集まっていた。ペテロは、遠くからイエスの後について、大祭司の家の中庭まで行った。そして中に入り、成り行きを見ようと下役たちと一緒に座った。
さて、祭司長たちと最高法院全体は、イエスを死刑にするためにイエスに不利な偽証を得ようとした。多くの偽証人が出て来たが、証拠は得られなかった。しかし、最後に二人の者が進み出て、こう言った。「この人は、『わたしは神の神殿を壊して、それを三日で建て直すことができる』と言いました。」
 そこで大祭司が立ち上がり、イエスに言った。「何も答えないのか。この人たちがおまえに不利な証言をしているのは、どういうことか。」しかし、イエスは黙っておられた。そこで大祭司はイエスに言った。「私は生ける神によっておまえに命じる。おまえは神の子キリストなのか、答えよ。」
 イエスは彼に言われた。「あなたが言ったとおりです。しかし、わたしはあなたがたに言います。あなたがたは今から後に、人の子が力ある方の右の座に着き、そして天の雲とともに来るのを見ることになります。」
 すると、大祭司は自分の衣を引き裂いて言った。「この男は神を冒瀆した。なぜこれ以上、証人が必要か。なんと、あなたがたは今、神を冒瀆することばを聞いたのだ。どう思うか。」すると彼らは「彼は死に値する」と答えた。
 それから彼らはイエスの顔に唾をかけ、拳で殴った。また、ある者たちはイエスを平手で打って、当ててみろ、「キリスト。おまえを打ったのはだれだ」と言った。マタイの福音書第26章57〜68節

主イエスは、大祭司カヤパの官邸に連行される。

当時の大祭司=ユダヤ社会における政治的、宗教的最高権力者
          
ローマ帝国による絶対的支配
被支配地には、信教の自由と、一定の自治権を与える。しかし、人を死刑に処す権限はローマ帝国のもの。大祭司にもサンへドリン(ユダヤ議会)にもイエスを死刑にすることはできなかった。

キリスト時代のエルサレム
サンヘドリン(最高法院)

大サンへドリン:70名の議員+大祭司
神殿内の一施設。異邦人の庭に向かって開かれた部屋
裁判、政治的議論、ユダヤ教の議論が行われていた。
安息日、祭日、祭日の前の夜以外の日中、毎日開催。

このイエスの裁判
過越の祭り(あるいはその前日)の夜、すなわち裁判は行われない日の夜に行われた。
カヤパの官邸で行われた。神殿の中の議場で行われたのでもない。
→正式の裁判ではなかった。
→全ての議員が参加していたとも考えられない。
(ニコデモやアリマタヤのヨセフがその場にいたとは考えられない。)
→イエスを殺したいと思っていたものたちだけが集められた可能性

イエスを死刑にするための証拠を得ようとしたが、証拠は出てこない。
そこで大祭司が立ち上がり、イエスに言った。「何も答えないのか。この人たちがおまえに不利な証言をしているのは、どういうことか。」しかし、イエスは黙っておられた。
→イエスは、自分の正しさを主張しない。
→愛は自分の正しさに死ぬ

イエスはこのとき、サタンをねじ伏せる戦いを行っておられた。

サタンの策略=人に自分の正しさを主張させる
罪の根源=自分の思いを正しさの基準とする

創世記 3章1~15節
“さて蛇は、神である主が造られた野の生き物のうちで、ほかのどれよりも賢かった。蛇は女に言った。「園の木のどれからも食べてはならないと、神は本当に言われたのですか。」
女は蛇に言った。「私たちは園の木の実を食べてもよいのです。
しかし、園の中央にある木の実については、『あなたがたは、それを食べてはならない。それに触れてもいけない。あなたがたが死ぬといけないからだ』と神は仰せられました。」
すると、蛇は女に言った。「あなたがたは決して死にません。
それを食べるそのとき、目が開かれて、あなたがたが神のようになって善悪を知る者となることを、神は知っているのです。」
そこで、女が見ると、その木は食べるのに良さそうで、目に慕わしく、またその木は賢くしてくれそうで好ましかった。それで、女はその実を取って食べ、ともにいた夫にも与えたので、夫も食べた。
こうして、ふたりの目は開かれ、自分たちが裸であることを知った。そこで彼らは、いちじくの葉をつづり合わせて、自分たちのために腰の覆いを作った。
そよ風の吹くころ、彼らは、神である主が園を歩き回られる音を聞いた。それで人とその妻は、神である主の御顔を避けて、園の木の間に身を隠した。
神である主は、人に呼びかけ、彼に言われた。「あなたはどこにいるのか。」
彼は言った。「私は、あなたの足音を園の中で聞いたので、自分が裸であるのを恐れて、身を隠しています。」
主は言われた。「あなたが裸であることを、だれがあなたに告げたのか。あなたは、食べてはならない、とわたしが命じた木から食べたのか。」
人は言った。「私のそばにいるようにとあなたが与えてくださったこの女が、あの木から取って私にくれたので、私は食べたのです。」
神である主は女に言われた。「あなたは何ということをしたのか。」女は言った。「蛇が私を惑わしたのです。それで私は食べました。」
神である主は蛇に言われた。「おまえは、このようなことをしたので、どんな家畜よりも、どんな野の生き物よりものろわれる。おまえは腹這いで動き回り、一生、ちりを食べることになる。
わたしは敵意を、おまえと女の間に、おまえの子孫と女の子孫の間に置く。彼はおまえの頭を打ち、おまえは彼のかかとを打つ。」”
創世記 3章1~15節”さて蛇は、神である主が造られた野の生き物のうちで、ほかのどれよりも賢かった。蛇は女に言った。「園の木のどれからも食べてはならないと、神は本当に言われたのですか。」
女は蛇に言った。「私たちは園の木の実を食べてもよいのです。
しかし、園の中央にある木の実については、『あなたがたは、それを食べてはならない。それに触れてもいけない。あなたがたが死ぬといけないからだ』と神は仰せられました。」
すると、蛇は女に言った。「あなたがたは決して死にません。
それを食べるそのとき、目が開かれて、あなたがたが神のようになって善悪を知る者となることを、神は知っているのです。」
そこで、女が見ると、その木は食べるのに良さそうで、目に慕わしく、またその木は賢くしてくれそうで好ましかった。それで、女はその実を取って食べ、ともにいた夫にも与えたので、夫も食べた。
こうして、ふたりの目は開かれ、自分たちが裸であることを知った。そこで彼らは、いちじくの葉をつづり合わせて、自分たちのために腰の覆いを作った。
そよ風の吹くころ、彼らは、神である主が園を歩き回られる音を聞いた。それで人とその妻は、神である主の御顔を避けて、園の木の間に身を隠した。
神である主は、人に呼びかけ、彼に言われた。「あなたはどこにいるのか。」
彼は言った。「私は、あなたの足音を園の中で聞いたので、自分が裸であるのを恐れて、身を隠しています。」
主は言われた。「あなたが裸であることを、だれがあなたに告げたのか。あなたは、食べてはならない、とわたしが命じた木から食べたのか。」
人は言った。「私のそばにいるようにとあなたが与えてくださったこの女が、あの木から取って私にくれたので、私は食べたのです。」
神である主は女に言われた。「あなたは何ということをしたのか。」女は言った。「蛇が私を惑わしたのです。それで私は食べました。」
神である主は蛇に言われた。「おまえは、このようなことをしたので、どんな家畜よりも、どんな野の生き物よりものろわれる。おまえは腹這いで動き回り、一生、ちりを食べることになる。
わたしは敵意を、おまえと女の間に、おまえの子孫と女の子孫の間に置く。彼はおまえの頭を打ち、おまえは彼のかかとを打つ。」”

そこで大祭司はイエスに言った。「私は生ける神によっておまえに命じる。おまえは神の子キリストなのか、答えよ。」
イエスは彼に言われた。「あなたが言ったとおりです。

あなたが言った→メシアは自分がメシアだとは言わない。
           他の人がそれを告白する。
           あなたがそれを告白しているのだ。

しかし、わたしはあなたがたに言います。あなたがたは今から後に、人の子が力ある方の右の座に着き、そして天の雲とともに来るのを見ることになります。」

=殺されたのち甦り、天に昇って神の右の座(=神と同列の座)につき、再び神の臨在の雲と共にやって来て、神の民を集める。
=イエスのメシア主張。十字架にかけられ殺されるのがメシアであることを前提とした言葉。

すると、大祭司は自分の衣を引き裂いて言った。「この男は神を冒瀆した。なぜこれ以上、証人が必要か。なんと、あなたがたは今、神を冒瀆することばを聞いたのだ。どう思うか。」すると彼らは「彼は死に値する」と答えた。
→彼らには人を死刑にする権限はなかった。別の理由(イエスが自分を「イスラエルの王」と称したという偽の理由)でローマに訴える。

イエスを殺すために議会開催の規則を破り、偽の証人を立たせ、偽の罪状でイエスをローマに引き渡したのが大祭司一味。

イエスは、それら全ての偽りに反論なさらない。

人は正しさを問題にする。
しかし、イエスが問題にしたのは、神の真実。

関連記事