「マタイの福音書」連続講解説教

あなたのタラントは誰か?

マタイの福音書第25章14節〜30節
岩本遠億牧師
2021年6月13日

“天の御国は、旅に出るにあたり、自分のしもべたちを呼んで財産を預ける人のようです。彼はそれぞれその能力に応じて、一人には五タラント、一人には二タラント、もう一人には一タラントを渡して旅に出かけた。するとすぐに、五タラント預かった者は出て行って、それで商売をし、ほかに五タラントをもうけた。同じように、二タラント預かった者もほかに二タラントをもうけた。一方、一タラント預かった者は出て行って地面に穴を掘り、主人の金を隠した。さて、かなり時がたってから、しもべたちの主人が帰って来て彼らと清算をした。すると、五タラント預かった者が進み出て、もう五タラントを差し出して言った。『ご主人様。私に五タラント預けてくださいましたが、ご覧ください、私はほかに五タラントをもうけました。』主人は彼に言った。『よくやった。良い忠実なしもべだ。おまえはわずかな物に忠実だったから、多くの物を任せよう。主人の喜びをともに喜んでくれ。』二タラントの者も進み出て言った。『ご主人様。私に二タラント預けてくださいましたが、ご覧ください、ほかに二タラントをもうけました。』主人は彼に言った。『よくやった。良い忠実なしもべだ。おまえはわずかな物に忠実だったから、多くの物を任せよう。主人の喜びをともに喜んでくれ。』一タラント預かっていた者も進み出て言った。『ご主人様。あなた様は蒔かなかったところから刈り取り、散らさなかったところからかき集める、厳しい方だと分かっていました。それで私は怖くなり、出て行って、あなた様の一タラントを地の中に隠しておきました。ご覧ください、これがあなた様の物です。』しかし、主人は彼に答えた。『悪い、怠け者のしもべだ。私が蒔かなかったところから刈り取り、散らさなかったところからかき集めると分かっていたというのか。それなら、おまえは私の金を銀行に預けておくべきだった。そうすれば、私が帰って来たとき、私の物を利息とともに返してもらえたのに。だから、そのタラントを彼から取り上げて、十タラント持っている者に与えよ。だれでも持っている者は与えられてもっと豊かになり、持っていない者は持っている物までも取り上げられるのだ。この役に立たないしもべは外の暗闇に追い出せ。そこで泣いて歯ぎしりするのだ。』
マタイの福音書第25章14節〜30節

タラント→「タレント」

本来の意味=重さを表す
金1タラント=6000日分の賃金

主人が僕たちに預けたタラントとは何か?

一般の理解=能力、才能、働き
        →神様は不公平という誤解

能力、才能という解釈は以下の理由で不可能
「彼はそれぞれその能力に応じて、一人には五タラント、一人には二タラント、もう一人には一タラントを渡して旅に出かけた。 」

イエス・キリストの最後の説教のテキスト構造全体を考える。

1 終わりの時、再び私は来る。それは完成の時。
2 全ての人は眠る(死ぬ)が、私が来る時、灯火のための油を用意していた者たちをエクレシアの婚宴に集める。
3 油を用意している=タラントを生かす
4 タラントの喩えの解説が、その後に語られる。

「すると、王は彼らに答えます。『まことに、あなたがたに言います。あなたがたが、これらのわたしの兄弟たち、それも最も小さい者たちの一人(のため)にしたことは、わたし(のため)にしたのです。』 」
          ↓
 タラントとは卑しめられている最も小さい人=キリストの兄弟!

能力に応じて、5人を託される人、2人を託される人、1人を託される人
・そこに不公平はない。

5人を託された人はさらに5人を得た。2人を託された人もさらに2人を得た。

愛が愛を呼ぶ働きの拡大。人は愛されたように、愛する者となる。贖いの愛は贖いの愛を呼び起こす。

1人を託された人
『ご主人様。あなた様は蒔かなかったところから刈り取り、散らさなかったところからかき集める、厳しい方だと分かっていました。それで私は怖くなり、出て行って、あなた様の一タラントを地の中に隠しておきました。ご覧ください、これがあなた様の物です。』
→主人に対する誤解と悪意
→その1人を無視した。

神さまの大切なタラント=宝物である人を無視した
だから、神様は怒る。

神様は、才能や能力を用いて教会で奉仕しないこと、できないことを問題視したり、そのことで怒るようなお方ではない。

託された人を自分が面倒見られない時、他の人にお願いすれば良い。

無視されていた人は、10人の人を得た人、多くの人と愛を分かち合った人に託された。
 石井十次、賀川豊彦、マザー・テレサのような人

1人を大切にし、1人を生かす尊い生涯

×あなたのタラントは何か?
○あなたのタラントは誰か?

【マザー・テレサの祈り】
 「最愛の主よ。病んでいる人は、あなたの大切な人。今日も、いつも、病人ひとりひとりのうちに、あなたを見ることができますように。看病しながら、あなたに仕えることができますように。
  イライラと短気な人、気難しい人、理屈に合わないことを言う人、人の目には好ましく思えないこうした人の中にもおられるあなたを見分けて、こう言えますように。『わが患者イエス、あなたに仕えることはとても嬉しい。』
 主よ、このように見る信仰を与えてください。そうしたら、仕事は少しも単調ではなくなるでしょう。貧しく苦しんでいる人々の気まぐれを、温かくユーモアのうちに受け止め、その人々の願い事を満たすことに絶え間ない喜びを見出す者となるでしょう。
 愛する病人さん、あなたがキリストを現しているとなれば、あなたは、二重に親愛な方となります。あなたをお世話することが許されるのは、わたしにとって特別な恩恵です。・・・
 神であるお方よ、あなたはイエス。わたしのお世話する患者のなかにおられます。どうかわたしに対しても、ひとりひとりの患者イエスが忍耐深いイエスとなって、わたしの数々の落ち度は大目に忍び、あなたの大切な一人一人の病人のうちにおられるあなたを愛し、あなたに仕えようとしているこの志だけを見取ってくださるようにしてください。主よ、今もいつも、わたしの信仰を強め、深めてください。わたしの努力と仕事を祝してください。」
(『マザー・テレサのことば』半田基子訳、女子パウロ会より)

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